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シャネルを着た悪魔
第10章 ☆CHANEL NO10☆
彼が三杯目のハイボールを作ろうとしていている。私は、もうお酒で温かくなった手で、彼の腕をつかんだ。
そして──強引にキスをする。
彼の口内に広がるハイボールの味は私の舌の上で転がりながら、微かに体の温度までもを上昇させた。
育ちの良さを感じさせる、真っ白で文句の付け所一つもない歯を舌先でなぞってから、ゆっくりと口を離す。
唾液が糸を引いているのが私の目にハッキリと映った。
「生理だってのに、俺を興奮させてどうするんだよ。おあずけか?」
「何か愛しいのよ、貴方が」
「はあ?」
「お世辞でも【幸せな人生だったわね】って言ってあげれない人生を歩んできたでしょ。」
「だからこそ、貴方は変な所が強がりで神経質な今のソンテヒョンになったのよ。」
「でもね、何だかそれが愛しいの。好きで好きで堪らないの」
「私が守ってあげたいって思った。」
「大事な時はいつも俺に守られてるオメエが俺をどう守るって言うんだよ」
「──私は、貴方の気持ちを包み込むの。彼女として……時には母として。」
「貴方が私に惚れたのは、そこまで会長を待ち続けた強さと、そんな凄い人に靡かなかった強情さを持ってるオンマと私を被せた部分が有るからじゃないの?」
「私は貴方のオンマにはなれない」
「でもオンマと同じ大きさの愛情で貴方を包み込むことは可能よ。」
「何を根拠にそんな事言ってるんだよ。」
「そんなの、私がアンタの事──大好きだからっていう根拠しかないでしょ」