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シャネルを着た悪魔
第10章 ☆CHANEL NO10☆
私は『彼』という存在に恵まれているらしい。リョウと同じくして5コールも経たない内に電話に出た彼。
「ヨボセヨ?」
「……ねえ、来たわよ」
「ああ?何言い出すんだよ」
「緊急速報」
「何の?ついにトランプが大統領辞任したのか」
「ばっかじゃないの。ウンサンの速報よ」
「──ああ。捕まっただろ、アイツ。」
「覚せい剤の所持、使用はしてないみたいだけど……何も関わってないよね?」
「何に関わるんだよ、俺が売ったってか」
「違うわよ。」
「……じゃあ、何が言いたい?」
あの時の、言葉を覚えてる。
『俺はお前にここまでしたコイツを見過ごせるほど、紳士じゃねえ』だったっけ。そんなニュアンスの言葉を──。
「貴方が、仕掛けたんじゃないの」
「どうしてそう思うんだよ」
「私の頬に傷が出来た事、今でも言うでしょ。あのクラブで言った時の言葉も──ずっと覚えてた。」
「それまでアートの噂も聞かなかったし、アイツの噂も聞かなかった。仕返しという事に諦めたとばかり思ってたけど「俺が仕掛けたって言ったらお前はどうするんだ?」
「え?」
「それはダメでしょって説教するか?それとも、よくやってくれた!って喜ぶか?」
「──。」
そんな事は両方有り得ない。
ただ疑問に思ったから聞いただけだった。
「お前は多分、どちらでも無えだろ。」
「じゃあ真相を聞く必要なんてない。」
「もし仮に俺が何かを仕掛けてた場合、ビビっちまうのはそっちだろ。じゃあ曖昧なままにしておこう」
「ビビるって何よ」
「人、一人を執行猶予で前科付かせる位どうって事ないって真実に」
「引くだろ。そしてお前の為とは云え、そんな行動をした俺にも」
「じゃあ──お前は何も知らねえままの方が良い」
一方的に電話を切った彼。
怒ってもいなかった。ただただ──冷静そのものだ。
「何?仕事の電話?アンタって英語そんなにペラペラやったんや」
「向こうに行って、余計ね。」
呑気な母親に、不愛想に返事をした。
あの言い方は──絶対テヒョンが仕掛けたって事なんだろうな。
良くも悪くも、この電話で『ヒント』を与えてしまったワケだ。これは心理戦、ってやつか。