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シャネルを着た悪魔
第10章 ☆CHANEL NO10☆
──家を出る私を見て二十歳の妹が、凄い羨ましそうな目線を送ってきたのを思い出して苦笑いを浮かべた。
ファッションに敏感な彼女は今日のツイードスーツがシャネルの物だと直ぐに分かったのだろう。
帰ってくるなり『土産は?』の一言を突き付けた彼女。
まあ二十歳という最も色気付きたい年頃だし……行動の理解は出来るんだけどね。
でも、さすがに寝る前に部屋に来て「何か要らない服ちょうだいよ」と言われた時は、しばき回しそうになった。
普通は『韓国どうだったの?』とか可愛げのある会話をしにくるはずだ。
ため息をつきながら、お正月に似た様なスーツを着て、この道を歩いた事を思い出す。
閑静な住宅街だ。
半年という月日が経ったけど人が歩いていないこの道も、何もかも変わっていない様に思えた。
変わったのは私の環境だろう。
前は『どん底』だったけど、今は『最高に幸せ』だ。
好きな男に素直になれて、実家に帰る事に対しても小言は言われない。お金にも困っていないし好きな事を出来る。
「こんにちは~」
お線香の臭いがかすかにした。
扉を開ける音が聞こえたのだろう。奥から懐かしいあの人が出てくる。