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シャネルを着た悪魔
第10章 ☆CHANEL NO10☆
「でも以前に増して綺麗になったよ。」

「痩せたんです」


「はは、外見の事じゃない。何ていうんだろうな──年の香だから分かるんだと思うが『本物のセンス』と『本物の愛』に包まれている気がする、今の君は」

「だからこそ、前よりも格が上がった様に思うんじゃないのかな」


「格ですか」


「そうだよ。それも見せかけの格じゃなくて──人間としての格だ」

「勿論、若いからね。今から吸収して色々とまだまだ学んでいくんだろうけど──。今でも十分、どこの世界でも通用しそうな位、良い女になったんだよ」



「そんな姿で帰ってきてくれてありがとう。」


おじさんの最後の笑顔は、心の底から私の復活を喜んでくれている様だった──。

よく芸能人が『ここの味で育ちました』とか『この人は東京の母です』とか昔お世話になった店や人をピックアップして言ってるのを見かける。

私がもし、そんな事を言う場面に出会ったら、まずこう言うだろう。『この人が女としての本当の知識を教えてくれた”東京の父”です』と──。



深く頭を下げてから、ドアに手をかける私の背中に思いついた様に突然、話し出した紳士。

「ああ、そうだ」

「どうしました?」

思わず、振り向いた。



「今の君のカレも充分に素敵だけど、僕が質預かりをする事になったキッカケを作ったカレも充分に素敵だよ」

「ちゃんと挨拶に行っておきなさい。それでこそ、貴方のもう一つの成長だ」



「──そう、ですね」

リョウの顔が浮かぶ。

アイツに全てを話したら……どんな顔をするんだろう?

前みたいに、冷静なまま?いや、それとも半年間も連絡を取れなかった事に対してまずは怒るかもしれない。

だからこそ──ちゃんと説明しないと。


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