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シャネルを着た悪魔
第10章 ☆CHANEL NO10☆


「……はあ、俺もお前にまだまだ甘いみたいだな。」

「そんな顔で、そこまで言われたら自分の中に決まったモンがあっても、これ以上詰められっこないんだよ」


「………。」

「その代わり、連絡先は交換だ。」


「彼氏が……。」


「ソンテヒョンだろ?もうここまで来たら、俺も伊達に生きてないし芸能界に居ないから理解できるよ、大筋は」

「いいじゃねえか。別に。俺とお前は『過去付き合った事がある人物で、今は大事なお友達』なワケなんだし」


「それで納得すると思う?」

否定も肯定もせずに、続きを求めた。

その意味を理解した彼は、どこか苦しそうな顔を一瞬だけしてから笑顔になる。

「納得させるのがお前の仕事だ。」


急に立ち上がると私のバッグを持って、勝手に中をあさる。

ものの数秒で携帯を見つけたカワスミ・リョウと云う人気俳優は慣れた手つきで自分の携帯を鳴らすと番号を登録している様な仕草を見せた。

「はい」

「……はあ、帰るのが鬱になりそうだわ」


「ドコにだ?彼氏の元に?それとも──あの動画が出回った『カンナム』にか?」


「そっか日本でも話題になったんだ、あの動画」

「うん、凄かったぜ。アイツが日本人の頬に触れてる訳だし相手はアート財閥だからな。しばらくはワイドショーもそのネタだった」

「あれで私ってわかったの?」


「99%。暗かったし残りの1%は別人の可能性もあると思ってた。でも、アイツにあそこまで言える日本人はおめえしかいないだろ」

「ははっ、ソコね。」


窓から入る木漏れ日はとても心地が良い。この事務所も良い場所に自社ビルを構えたんだな。


「ま、良かったじゃねえか。アートの長男も捕まったし」

「あれエグイよね。あの財閥ももう終わりよ」


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