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シャネルを着た悪魔
第11章 ☆CHANEL NO11☆
深く暗い蜷局に巻かれた様な世界から一変、急に一筋の光に導かれる様にしてあの世界が見えてきた。
舞台は、海辺に建てられた家だった。
カーテンも窓も全て開けっぱなしだから海の音が聞こえる。
そこにはブロンド美女の姿は無い。
私の目に見えたのは、キレイな格好をして、知的な顔つきの男性がティーカップに粉を入れてる瞬間だ。
お昼頃だと思う。
バルコニーの直ぐ側にある浜辺では、小さな女の子が一人で貝殻を集めていた。
『今日は何の用?』
『何もない。──ただ君に会いたかった』
バスローブ一枚で出てきた彼女は、オレンジ色の香水をつける。
腕に一滴だけ──。ああ、時代が古いんだろうな。今なら吹き掛けるタイプの香水が主流だ。
彼女は、ティーカップを持ち妖艶そうな微笑みを向けるとそのお茶を飲む。
私には唇しか映っていない。
化粧気は無さそうだけど、肉感的な女性らしい顔つきをしているのは間違いないだろう。
『────っ』
まるで漫画の様に、即座に切り替わる場面。……倒れ込む瞬間の彼女はこう言った。
『あの人は私を愛してくれると思ったのに……どうやら私が彼を愛しすぎたようね。』
と、誰にも聞こえないほどの小さな声で。