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シャネルを着た悪魔
第11章 ☆CHANEL NO11☆
「……目ぇ、覚まさないんじゃねえかと思ってた。」

「え?」


「っ──はあ。」

一度深呼吸をした彼はいつも冷静なのが取り柄なのに──今日はどこかその長所が失われかけている様な感じ。


「リョウさんから電話が来た。リサの様子が可笑しいんだけど何処に居るか分からない、と。」

「で俺も話を聞いて不審に思ったからお前の携帯に付けてるGPSを使って、その位置情報を送ったんだ」


「一番最初に駆けつけてくれたリョウさんが見たのは──血まみれで倒れてるお前だった。」

「あと7分、発見が遅かったら命は無かった……らしい。」


やけに喉が乾く。ベッドの隣に置かれて有る天然水を一度に半分まで飲みきった。

「丸一日寝てたんだ」

「………え?」


確かに、夢を見たのはあれだけじゃないと思う。空を飛んでた記憶も有るし、犬夜叉の世界にタイムスリップしてた記憶も有る──。

「丸一日?」

でも、そこまで寝てたなんて……想像もしていなかった。

病院に搬送されている事実にも目を背けたいくらいなのに、いきなり私がこの現実を全て受け止めれるはずがない。


「なあ、俺……お前と離れた方が良いのかな。」

「何言い出すのよ。」

誰もサスペンスドラマみたいに私にリンゴを剥いてくれない。

テヒョンなんて手を離そうとすらしないのだ。


「サセン、だと思う」

「どうしてそう思うの。」

一度窮地に陥った人間は強い。

どん底に落ちた時は『死んだも同然』だと思った。

そして刺された時は──『死んだ』と思った。


二つの壁を乗り越えて、まだこの世に存在していることは確かなのだ。

幾分テヒョンの方が、どこかフワフワしていそうな雰囲気が出ている。

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