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シャネルを着た悪魔
第2章 ☆CHANEL NO2☆
早速、右手の薬指につけて出勤した。
どうして薬指なのかって、そんなの理由はひとつ。私の指が太くて中指には入らなかった、それだけだ。──あながち、それをアイツも狙ったんじゃないの?とさえ思える。
「おはようございます」
「おはよう。今日はヒルトンホテルのレストランで挨拶だ。服はそれで良いな?」
「はい。」
今日は首にエルメスのヴィンテージスカーフを巻いている。ブローチは無しだ。
有るのはこれも又、ゴールドの社章だけ。スーツはワインレッドにした。少し派手だけど、アパレル関連だし──何と言ってもヒルトンホテル。
華やかな格好で向かった方が会社としての格も立つ。
──何だかんだ世渡り上手というのは、こういう場面で重宝されるから有り難い。ある意味ホステス要因なのかもしれないけど。
「その指輪……スターサファイアだろ?どうしたんだ?」
「自分で買いました!!」
「いや、そこまで胸をはって言われたら逆に怪しむもんだぞ、男というのは。今度から親に貰いました、にした方が良い」
真面目なアドバイスをされて、何故この人がここまで出世したのか理解に苦しんだ。
今頃、呑気に年末休みを取って家族で旅行に行ってるハズの”例の陽気な上司”なら、ジョークの一つや二つは返してくれていただろう。
スーツについている糸屑を取ってからデスクに向かい、残っている取引先へのメールの返信、そして商品説明の翻訳等を行う。
約束の時間まであと二時間。
それまでには全部終わるだろうし、コーヒーの一杯は飲めるだろう。