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シャネルを着た悪魔
第12章 ☆CHANEL NO12☆

オーダーメイドで作ったらしい真っ赤な皮のトートバッグから取り出したのはレモンティーとミルクティーだった。
当たり前かの様に蓋を緩めて私の目の前へ置いてくれる。
「まだ15時だけど、今日は仕事終わり?」
「ああ。おめえが帰国するから今からオフだ」
「お疲れさま」
「ってか、財布見つかって良かったな。結局リョウさんの事務所に有ったんだろ?」
「そうそう。本当に変な人に見つかってなくて良かった。その部屋もあれから誰も使ってないらしくて、見つけてくれたのはリョウのマネージャーだから」
「安心できるって事か」
「そう。」
「おめえも日本に帰ったと思ったら、アートの長男が捕まるわ、財布落とすわ、挙句の果てには刺されるわ、で災難だったな。」
「やっぱりずっと韓国に居ろっていう神のお告げじゃねえのか?」
「そんな神のお告げなんてなくても居るつもりだわ。」
「──へえ。」
「そういえば、オリオンモール行かねえか?」
「オリオンモール?どこそれ」
「新しく出来たんだよ。アート財閥が作ったモールだけどあの一件でガラガラらしい。どんなのか見てみたくて」
「あんたも性格悪いわね。そこまでしたのは『帝国』だって言うのに」
「俺は否定も肯定もしてねえだろ、そう思うなら思っとけや。って話だ」
どこまでも強気な彼にはこういった類の心理戦では勝てない事をよく知ってる私。
やさしさのお陰ですんなりと開けれたミルクティーを飲んだ。
「日本はどうだった?」
「楽しかった。質屋のおじさんにもお金返せたし──」
「それは良かったな。だからこその”中指”に光るスターサファイアだもんな」
「何、そのイヤミ。じゃあ薬指に光る指輪買ってよ」
「プロポーズか?」
「は?違う。『集ってる』のよ」
悪気もなくそう言いのけた私に彼は懐かしい笑顔で大きく笑い出した。

