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シャネルを着た悪魔
第12章 ☆CHANEL NO12☆
「うわ、噂で聞いてた以上だな」
本気で驚いた顔をする彼。
私も……これはヤバイと思う。だってこんな大きいモールなのにメインフロアである一階には私達含め15人程度しかお客さんが居ないんだもん。
ショパールの時計はもう午後18時を示している。本当なら一番混む時間帯なのに──。
地下にある筈の食品売り場からも活気のある声は聞こえてこなかった。
日本でも若い子達の百貨店離れがよく取り上げられてるが、さすがにここまでではない。韓国は『世論』を反映する国だ、と言われてるけど、正直ここまでだとは──。
有線で流れるサファイアの人気ナンバーワンバラード『white kiss』も、いつも以上に寂しく聞こえる。
「何か見るか?」
「いや、店員さんに近付いたらテヒョンの正体バレそうだから良いわ。」
「何だそれ。」
「有り得るでしょ。サングラスしかしてないんだし」
「まあ。……あんな事が有った後だし、あんまり目立つ行動は確かに避けた方が良いかもしれねえな」
『俺も手伝うから、さっさと終わらせちまおう』という言葉は結局ウソだった。
コイツは部屋にこもって読書タイム。
どうやらそれも『感受性を育てるため』に必要らしい。……本当かウソか分からない言い訳だけど、そう言われたら手伝って貰わなくても良いわ。ってなるのが女性。
一人で大きいエルメスの紙袋に服を入れてクリーニングへ持って行ったし、ゴミなんか両手に二つの袋を持って計三回捨てに行った。
セットで使ったであろうヘアピンをそこら辺に捨ててるから掃除機は二回も詰まるし──排水溝には髪の毛詰まってるし。
きっとジムにいってなかった大阪生活で溜まった脂肪は燃焼出来ただろう。それくらいわたしは動き続けた。
「腹減ってんのか?」
「何で?」
「いや、ずっと階数表の一番上見てるから。あれダイニングフロアだろ」
「ウソ、私見てた?」
「うん。」
隠すのが出来ないのか。私は。
正直に首を縦に振ると、それが嬉しかったのか頭を撫でてから『ついてこい』という様に先にエレベーターの方へ歩き出す我儘大魔王。
でも、こういう所が憎めない。