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シャネルを着た悪魔
第12章 ☆CHANEL NO12☆
──「緊急です、緊急です」
トイレ内にも聞こえる大きなマイクの音。この位の韓国語なら分かる。
「おい!リサ!」
扉を叩く音が心臓に響いて、少し痛い。唇が震えて返事をしてあげることも出来なかった。
それもその筈。
もうトイレに30分くらいは籠っている。特に良くなることもなく悪化するのみの、この体調。
傷口にバイ菌が入ったのかな?
それとも本当にお腹、冷えちゃった?
ガクガクと震えながら、肩を抱いた。
「おい、リサ!開けるぞ!」
──007のアクションシーンみたいだ。ドアが一気に解除され、白衣をきた人物や、モールの責任者までもがテヒョンを中心として、中へ駆け込んでくる。
「リサさん、我々の声は聞こえますか」
「……」
聞こえる。
必死に目で訴えると、一番若く見える男性が懐中電灯の様なもので私の眼球を照らした。
「이것은 독약에 의한 증상입니다!」
( これは毒物による症状だ!)
「서둘러라! hurry up!」
( 急げ! 早くしろ!)
担がれる様にして持ち上げられた私は、視力はハッキリしている。
テヒョンのこの世の終わりみたいな顔が見えた。
「──どういうことだよ?!」
「ソンテヒョンさん、説明している場合じゃありません!とりあえず救急車に乗って下さい!」
「裏口を開けてます!正面入り口はテヒョンさんの目撃情報と救急車の野次馬が重なって出れないです!」
「道は開いてますか?!」
「裏口を左に曲がって頂ければ、1分ほど遠回りになりますが大通りに出ます!正面から今出ることを思うと──」
「一分……」
「テヒョンさん!あなたが呆然としてどうするんですか、早く!」