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シャネルを着た悪魔
第12章 ☆CHANEL NO12☆
静かになった診察室。気を使ったのかナース達も外に出てくれた様だった。
余りにコマが進みすぎてるこの物語に、付いていけないのは、どうやら私だけじゃないみたいだ。
目の前のテヒョンも、何から話せば良いのか分からない──と云った顔をしている。
だけど眠っていた私の方がもっと分からない。
お茶を啜りながら、彼が口を開くのを辛抱強く待つしかなさそう。
「なあ」
「何?」
「何か、呆気に取られてるんだよ。俺」
「何に呆気に取られてるの」
「この状況、すべてに」
「──私、何があったの?」
「もう深呼吸して勿体ぶるのすらも可笑しく思えるほど、出来過ぎてて、話のスピードが早い物語を俺達は進めていってるみたいだな」
「………。」
「ドラマも小説も、ノロケシーンばっかの、ほのぼのしたヤツは視聴率が取れない。これは常識だ」
「だから誰かが死んだり、悪いヤツが出てきたり、誰かが記憶喪失になったりする。」
「──でもなあ、お前と俺のこのストーリーは……俺、出来過ぎだと思うんだ。」
「妊娠してたの?」
「料理にも含まれてた、前言った──毒薬が。」
……確かに出来過ぎだ。
彼との子供が出来て、それで腹痛を起こし、結婚します!っていう甘いストーリーを想像した私がバカ過ぎる。
もう痛みなんて無いはずなのに、また心なしかキリキリお腹が痛んできた気がした。
「前と同じのが、って事?」
「ああ。ただ、今回は微量。だからリサは今生きてる」
ジェイソンボーンに成れるかもしれない。
私はこの二ヶ月の間に何度死にかけてるんだろう。刺された次は毒薬混入……か。
テヒョンが、死んだ様な笑顔を浮かべた理由が今分かった。
「10分後くらいに帝国からヒョンが来る。」
「……イさん?」
「ああ。──申し訳ねえけど、俺……もうどうしたら良いか分かんねえよ」