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シャネルを着た悪魔
第2章 ☆CHANEL NO2☆
何を話す事もせずに、私達は二人で各自の携帯を見たり、本を読んだりしていた。
すると────。
「遅れました」
という日本語が聞こえてくる。
確実に、取引先の声だ。私と上司が勢いよく同時に席をたった。
と同時に聞き覚えの有る声の主の顔がパッと頭に浮かび❝おいおい、勘弁してくれよ。❞と云う思いがよぎる。
そしてその思いを受け取ったのか───
そう、シャネル野郎はわざと私に深くお辞儀をした。
……まるで話がポンポンと進みすぎていないだろうか?
出来の悪い恋愛小説みたいだ。
私が好きな恋愛小説ってのは出会いから付き合うまでもに、ひと悶着、ふた悶着有って、やっとカップルになって、そして沢山の付箋を回収しながら先に進んでいく様なストーリーなのに。
なにも知らない上司がベラベラと下手な英語を喋りだして、ウェイターにコース開始の合図をする。
彼たちは『撮影があるから』と一杯だけアルコールを頼んでいた。……なのに、上司はウーロン茶。こういう所がクソ真面目と言われるんだよね。
「──私は……グラスワイン赤で!フルボディのアメリカ産カベルネでお願いします。無かったら渋いのをお願いします。」
沢山あるメニューの中からどれにしますか?と聞かれるのが分かっていたから、先に答えた。
キツイ目線を無視して『ヨナピョンが愛している』、そして『二回目の再開を果たした』ウチのVIP得意先に微笑みかけた。