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シャネルを着た悪魔
第12章 ☆CHANEL NO12☆
「あと、コレ。帝国のゴールドカード。役員や役員親族しか持ってないヤツで、これ有ればグループの息かかってるホテルなら当日でも取れるから」
「何なのよ」
「ああ?何がだよ」
「……出ていけって言うの?こんな格好で?」
「普通の格好だろう。点滴も流し終わってるし、もしアレならヒョンに言って明日にでも宿泊先に先生に来てもらえよ」
「じゃあ言い方を変えるわ。カンナムの──あの家に帰るな、と言いたいの?」
「何勘違いしてんだ?」
「アレは俺の名義で、俺が家賃払ってんだ。」
「帰らせるも帰らせないも俺が決めるのは当たり前だし、根本的に俺の家なんだよ。」
「最終的に俺のせいにする様な女なんか要らねえよ」
「さっさと俺の前から消えてくれや。」
わざとらしく椅子を蹴るテヒョン。
わかってる。もしかしたらこれが演技の可能性も有る事も。そこまでして私を愛して、守りたいと思ってくれている事も。
でも、そんな可能性に掛けて笑顔で彼を抱きしめる勇気も根性も、正直色々と災難に見舞われた今の私には無いに近い。
もう──涙なんて出てこなかった。
精一杯に捻り出した言葉は──
「貴方はあたしを愛してくれると思ったのに……。」
「どうやら、私が貴方を愛しすぎていたようね。」
ブロンド美女と同じ言葉。
単語の使い回しも、言い方も全部同じだ。
まさか──こんな時が来るなんて。
彼女の境遇に立つ時が来るなんて。
少しだけフラつく体をイさんに支えて貰いながら、診察室を後にした。私の手には財布と、テヒョンに投げられたカードのみ。愛や優しさは無い。