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シャネルを着た悪魔
第13章 ☆CHANEL NO13☆
「そればっかりは性格ちゃう?」
「性格?」
「そう。だって別れた瞬間に過去の相手何かどうでも良くなる子も居るやろ。」
「だけどお母さんは──」
「あの人の事愛してたで。お母さんを変えてくれて、幸せにしてくれたのはあの人やった。愛も感謝も両方有る」
「だからこそ──まあ、アンタも大人やから言うけど、私は再婚せえへんかった」
「アンタに感謝の気持ちが有るなら、それは一人間としてキッチリと対処してあげるべきちゃう?もし笑われた時は笑い返してやったらいいんよ」
「その時は──帰ってこればいいだけの話」
シンプルな言葉。
又も──母に背中を押された。
「なあ、お母さん」
「何よ」
「私、今から韓国行ってくる」
「……。」
まだ韓国行きの夜行便は有る。
メンバーズカードの入っている財布をボッテガのカバンに入れた時、母が何か言う。
「──と思うで」
「え?」
「こっちからニューヨークまでは約一日よ。アンタが誰を追いかけて、誰を大事に思ってるのか何て分からんけど」
「もし、会いたいお目当ての人が忙しい人なら──既に出発してニューヨークのホテルに宿泊してるはずちゃう?」
ニヤリ、と笑った。
私と良く似た笑みだ、さすが親子。
「……ありがとう」
パスポートと化粧ポーチ、携帯歯ブラシと財布と携帯。
身軽な女性特有の少数の荷物を素早く詰め込んでプリウスのキーを取り、カルティエのハイヒールを履いた。
今日はジーユーのスキニーパンツにヌメロのTシャツ。
ヌメロと言えば『N 21』のロゴが特徴的なのに、今日着ているのは限定品の『C 5』と大きく掛かれてある。
読めるんだ、彼女が愛した……
そして彼が愛した──『CHANEL』の5番とも。