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シャネルを着た悪魔
第14章 ☆CHANEL NO14☆
下地はエチュードハウス、ファンデーションはシャネルだった。眉毛に移る瞬間、ティーが初めてメイクして貰った時と同じくして鏡越しに私を見ながら恐る恐る口を開いた。
「オンニ」
「はい?」
「──オッパと別れたの?」
「……えっ…てか何で?」
別れたって…。親戚って嘘も早々に見破られてたんだ。まあ、そりゃそうか。誰でも分かる嘘を私達は必死に二人してついてたワケなんだから、ねぇ。
「最近会わないし、オッパも──」
その先は簡単に想像できる。
いつもと様子が違う、って事に違いない。
「ねえ、ティー」
「ん?」
「もう親戚云々の件もいい加減飽きたでしょ?だから素直に言うけど。私さ、まだテヒョンの事好きなの」
「オンニ、ティーもこんなことに口を挟んで良いのか分からないけど……オッパとオンニは好きで別れた訳じゃないでしょ?もし望んで別れたのなら、オッパは毎日あんな死んだ様な顔をしない筈だもん」
「────。」
「ティー、オッパの事よくわかってると思う。勿論、メンバーには勝てないけどスタッフの中では一番よく見てきた」
「ブラジル人のモデルさんと別れた時も韓国のアイドルと別れた時も、オッパはあんな顔しなかったよ。」
「あの人の性格だから、別れても友達で居れば良いとかそういう風に思ってたんだと思うの」
「でもリサオンニに対しては違った──」
「仕事場に連れてきたのもオンニが初めて」
「何かね、前までの『今日の朝ごはんは手抜きだった、アイツ働いてねえくせに』っていう小言を言いながらもティーが評価した化粧品をオンニの為に買って帰ったりさ……」
「『今日は筑前煮だから早く帰る』ってウキウキした顔で楽屋後にする姿もさ──、そんなオッパが本当に嬉しそうだったの」
「私も、そうなの」
「……ねえ、もう一度やり直せないの?」
「じゃあティー、背中を押してくれない?少し頼み事が有る」
「何?」
「──テヒョンのアドレスを教えてほしい」
ラインとかカカオトークだと私の名前を見て、内容を削除してしまう可能性がある。だけど……メールだと一度は目を通すだろう。
私らしきアドレスから送られてきた『音声ファイル』を開いてくれる事を望むのみだ。