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シャネルを着た悪魔
第14章 ☆CHANEL NO14☆
午前9時にはホテルを出た。会場に到着したのは9時20分。
気を使ってくれたのか私はティーとイさんと同じ車で送られて、会長達は防弾ガラス付きのベンツを使用していた。私達もスカイラインだから高級車に乗せてもらった事になる。
ティーと車内で話したのは、テヒョンの話題。
──あの音声は、会長が私に話した『自分の気持ち』と『二人を応援している』という事実。あれを見てほしい……。そうすれば、あの人の気持ちも変わるかもしれないから。
私も自分で伝えるんじゃなくて彼の親を使った事になる。
バカなのか──ズル賢いのか。どちらに結果が転ぶかで、それすらも判定が覆りそう。
「ねえ、オンニ!舞台に立つって事は何か話すの?」
「ううん、形だけの通訳。でも日本からの記者の質問を受ける事があるなら──その時は通訳としてちゃんと仕事するかもしれない」
「へえ。凄いね」
用意された楽屋でマカロンを食べながら、そんな話をしていた時、ノックされる扉。
「はい!」
「ちょっと失礼。」
ハスキーで気の強そうな声の持ち主は会長の奥さんだった。強引に私達の部屋へ入ってくるなりティーに言う。
「ねえ、このファンデーション少しテカっている様に見えない?」
「あっ…多分、それはラメが入ってるからです」
「──そうなの。まあどっちでも良いんだけどもう少しマットなの無いのかしら?」
「テレビに映る時はそれくらい光っていた方がアジア人は艶が出るといわれているんですけど……変えて良いですか?」
「良いのよ。変えてちょうだい。」
ファンデーションを今から変えるとか、この人の自己中さも筋金入りだな、と隠せない苦笑いが自分の顔に浮かぶのが分かった。私にだけ見える様にティーは眉間に皺を寄せてから、今度はディオールのメイク品を持って彼女に着いていく。
きっと──彼女にメイクしたくないんだろう。その気持ちは正直、ちょっとだけ理解できる。
「奥様、ファンデーションはこのディオールで良いですか?」
「さっきのは何だったの?」
「さっきのはシャネルですね」
「そんなゲスなブランド使うからよ。誰でも買える様な化粧品……」
かなりの嫌味を言う奥さんは、自分の皮脂のせいでテカってきたかもしれないという可能性を全く考えないらしい。
その神経の強さは、見ものだ。