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シャネルを着た悪魔
第14章 ☆CHANEL NO14☆
「帝国の今後の課題は人材育成です。」
「経営と野球は似ています、思いませんか?」
「いくらお金が有って良い人材を連れてきても、生え抜きを育てる事もそうだしその人物をもっと高みに持っていく事が出来ないと元も子もない。」
「今のまま私が第一線を退くと──グループは大きな危機を迎えます」
「ですから、誠に勝手ながらこの場を借りて皆さまに約束させてください。」
「私は、適切な人間が育つまで帝国の一線からは何が有っても、今後どんな壁が襲おうとも逃げる事はしません」
「横に立つ”妻”の愛した『上野芝財閥』の思いも胸に抱きながら、今後共もっと成長していく事をお約束致します」
「正直な話をしましょう。今、韓国では財閥によるワンマン的な面が非常に問題になっています。」
「そういう流れを作ってしまった責任は、ずっと不動の地位を築いてきた我が帝国グループにあるかもしれない。」
「でも、皮肉な事にそれを変える事が出来るのも──これからも不動の地位を築き上げ続ける帝国しかないでしょう」
「ですから皆さま、これからも……我々『帝国グループ』の事を信じて、我がグループに付いて来て下さい」
「必ず──必ず『損』はさせません」
深く夫妻が頭を下げた。
私もつられる様にして頭を下げようとした、その時。
一番前の列に居る女性から目が離せなくなる。
首から掛けている社員証の名前は見えない。だけど、私は──彼女の顔に見覚えが有るのだ。
とても華やかで、きっとアメリカでもイギリスでもスペインでも……町行く男性は振り返るだろう。
それほどの美人。少し気が強そうで、知的な雰囲気が有る。
誰だろう?もし似ている人物を言うのなら──ああ、そうだ『武田久美子』かもしれない。
「……た、けだくみこ?」
考えて、自分で疑問に思う。
疑問に思ったその瞬間、あの時と同じ──初めてBNに行った時と同じデジャブが再び私に襲いかかってきた。