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シャネルを着た悪魔
第15章 ☆CHANEL NO15☆
「テヒョン、泣かないで」
すっかり意気消沈しながら私の手をあの時と同じくして、しっかりと握っている彼は私が目を開けた事に気付いていない。
声が聞こえて凄く驚いたのだろう。
あの夢に出てきた坊やと同じ顔をしていた。
「……お、おめえ」
さすがに私もバカじゃない。
あんな事が起こって直ぐの今回。
何があったのか理解するのも容易かったし、もっと言えば此処が病院だって事なんて、直ぐに分かった。
「リサ……リサだよな!?」
「そうよ。」
少し見ない間に肌が荒れてしまっているテヒョン、心なしか頬もこけていた。
「生きてるんだよな」
「生きてるからアンタと話してんのよ」
ベッドに横たわりながら、左ももはしっかりとギブスの様なもので固定されている。
そんな女が、こんな口を利くなんて──
やっぱり私は撃たれても刺されても根本問題、相手がテヒョンだと性格までは変わらないんだろう。
「リサっ──!」
上半身を全て包み込む様にして、抱きしめられた。
いつもの香りがしない彼は何だか別人みたい。
「ねえ、ここってアメリカでしょ?」
「──来たんだよ!」
「おめえの……メール見て、親父の会見を見届ける決心がついた。そしたら──あの様だ。」
「仕事は?」
「仕事なんかしてられると思うか?」
「ははっ、アンタらしいわね」
「違う、俺は仕事を優先する人間だ。相手が──撃たれた相手がおめえだったから、俺はここまでするんだよ」
顔は見えない。
鍛えられた腹筋は、とても男らしかった。勿論、彼の言葉も行動も全て、だ。
「……会長は?」
「俺が到着する前にヒョンから聞いたのかして病室を出てったよ」
「会いたくなかったんだろうな。」
「──まだそんな事言ってるの?あのファイル開いたんでしょ?」
「………。」
「お互い、意地を張り過ぎよ。」
ため息をつきながらベッドサイドに置いてあるココナッツジュースの様なものを指さした。
彼は小言など言う事もなく優しく──いつもと同じ、ちゃんとペットボトルの蓋を緩めて私に渡してくれる。