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シャネルを着た悪魔
第15章 ☆CHANEL NO15☆

「ねえ、二人はどうなるの?」

あれから30分程、抱き締めあった。何かを言う訳でもなく、ただただ無言で……。

だけどその時間は、私が一ヶ月間に感じていた寂しさを埋めてくれるものだった。


「全部、証拠揃ったからな。お前が目覚ます一時間前くらいにニュース速報で流れたよ、実名付きで」

「実名?!圧力は?!」


「……冷静に考えろ、帝国の会長が怒った今回の出来事だぞ。圧力も何も無いだろう。」

「でもそんな出来の悪い息子でも、息子は息子じゃない。」



「リサ、経営者ってのは情にアツい部分もあるが冷たい部分も有るもんだ。」

「相手が愛した家族であっても、道理の外れた事をされたのにグループの力を使って庇う必要はない。」


「親父は……ロクでも無え父親だったけど、そういう所はちゃんとしてる。」


「あの人は不正も何もなく帝国を大きくした。だからこそ、あの賄賂の一件で兄貴をあそこまで落とした……」


「そして、すっかり自暴自棄に成り、己の力で這い上がってくる気のない息子を帝国から離れさせた。可愛い子には旅をさせろ、だな。」


「ま、旅どころか長いお勤めに行く事になっちまったけど。」

まるで拍子抜けしそうだ。

これを冷たいと言ったら間違ってるんだろうけど、テヒョンがここまでアッサリと言える事には心底ビックリ。


何も言えずに黙っていると、彼の携帯が鳴った。何かのお知らせだろう。電話やメールでは無さそうだ。


「……。」

「どうしたの?」


「帝国の株価暴落だってさ」

ほら、と見せられた画面にはヤフーニュース。大きな見出しになっているのは、彼が言った言葉そのもの。

「前日比マイナス12%って……」


大幅下落だ。

日本でも大きなニュースになったライブドアショックでさえも地検に入られたその日は、マイナス11.7。

それ以上だと考えると──帝国株価の今回の変動は大きすぎる。


「これ、今はストップ安だけど明日になればもっとヤバイんじゃないの」

「……まあ、跡取りだと言われてた息子が殺人容疑でイカれたんだ。仕方無え部分もあるけど……」


天下の帝国

不動の地位


そんなの何回も聞いてきた。

だけども、この世に絶対は無い。


ここまでの下落は──あのグループにとっても大きな痛手になってるだろう。

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