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シャネルを着た悪魔
第15章 ☆CHANEL NO15☆
呆然としていた時、病室のドアがノックされる。
「はい」
私の代わりに返事をしたテヒョンは素早く携帯を直して、振り向いた。
──静かに開けられた扉の向こうには、エレベーターで会った時と同じ二人組。
「ええ、ヒョン?!……親父も。」
私より驚くテヒョン。
そんな彼を無視して、二人は中に入ってくると机の上に何やら袋を置いた。
「あ、あの……それは」
「何やら話し声が聞こえると病院の人から聞いてね。」
「……とりあえず目を覚ました祝いに何かを買おうと思って、買ってきたんだ。ケーキは好きかい?」
「──っ、はい!」
恐る恐る紡いでいる言葉は、会長の不器用な優しさと同じだな。
彼には娘が居ない。
この位の年の女の子に、どうやってモノを言えば良いのか分からないのだろう。
だからこそ、こんな撃たれた直後だと言うのに甘ったるいケーキを買ってきたのだ。
『女は皆ケーキが好き。ケーキは別腹。』という話の真相を知らないのだと思う。
何だか、それが愛しくて笑顔で頷くと少しだけ嬉しそうな顔をしてイさんにお皿の用意と紅茶の用意を頼んでいた。
「パインのケーキかイチゴのショートケーキ、フルーツタルトとチョコケーキも有るが……リサさんはどれが食べたい?」
「フルーツタルトで!」
「──お前は?」
目を合わす事なく、紳士は言った。
問いかけた相手はテヒョンだろう。お互いが不器用過ぎて笑ってしまいそうだ。
『会長の息子』も又、目も合わせずにチョコ、とだけ呟いた。
「イはイチゴだろ。」
「会長、パイン食べれるんですか」