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シャネルを着た悪魔
第15章 ☆CHANEL NO15☆
私は、あと四口程度で食べ終わりそう。そんな時──何とテヒョンが会長に声をかけた。
「なあ、」
「……。」
「親父に言ってんだよ。」
「てっきりイに言ってるのかと思ってたよ。何だ?」
「──帝国、大丈夫なのか。」
彼はもうケーキを食べ終わったらしい。四人の中で一番早い完食だ。
ペロリと口の周りを舐めると、そんな真面目な話をしながら紅茶を啜った。
撮影の途中で向かってくれたのかもしれない、セットしていた髪は徐々に崩れかけていた。
それでも格好良いのには変わりないんだから、彼の顔は本当に整ってる。
「株価の事か。」
「ああ。12%だろ。」
「はっ、大丈夫に決まってる。帝国グループだぞ。」
「でも──この世に絶対は無えじゃねえか。」
「そうだな。だけど何度も言う様に帝国グループだ。明日もストップ安を更新したとしても、打撃は有るが潰れはしない。」
「潰れない事はわかってる。でもロッテが追い上げて来てるのは知ってるだろ」
テヒョンが出したワードは日本でも有名なロッテ財閥。
ああ、そういえば何時だったか彼言ってた。ロッテには日本の血も入ってるって。
「何でロッテなんだ」
「──俺もバカじゃない。ロッテの会長のソンさんと親父は昔から仲悪いだろう。」
「………。」
「そんなソンさん率いるロッテ財閥は、この一件の後直ぐにインスタグラムに家族ショットを載せた。」
「娘と息子二人の素晴らしい、まるで作ったかの様な功績もな。」
「──。」
ああ、そういう事か。
きっとロッテグループは言いたかったんだ。私の所は家族内でのゴタゴタなんか無い、と。
帝国を見限るなら今だ、と。
「良いのかよ。そんな財閥が今韓国では二位だ。」
「良いも何も株価が下がったのは仕方ないだろう。身内の不祥事が続き、嫁のあの行動で夫婦仲が悪いのも世間にバレた。」
「──仕方ない、で終わる話じゃねえだろ。ロッテと今、資産でどの位の差があるのかなんて知らねえけど」
「この世に『絶対』が無い事を思うと……抜かされる可能性だって有るんだ」
「しょうがねえ、じゃないだろ。親父は……親父はロッテに負けるかもしれねえのに悔しくないのかよ」
「あんな、汚い手使ってのしあがって来た財閥に負けるなんて──。」