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シャネルを着た悪魔
第15章 ☆CHANEL NO15☆
「テヒョン、分かるだろう。」
「お父さんは……会長はこの大事な時に、明らかに落ち込む事が分かってるこの時期に、代表取締役の名をシンビさんにしたんだ。稼ぎ頭の会社二つの──。」
「航空とセメントはあそこまで大きくなった。僕が一線から退いてもシンビの側近たちが何とか遣り繰りするだろう。」
「──テヒョン、僕の第二の人生は愛子と共に過ごすことだ。」
「あの時、リサさんが撃たれていなければ写真を見せようと思ってた。隣にシンビが居ることなんて放置して、愛子の写真を見せようと……」
「そして、言いたかったんだ。会うことは出来ないけど残り少ない人生、彼女と共に生きたい。と──」
先程までの楽しそうな表情から一転、膝に両肘を付き、顔を押さえるテヒョンの頬には涙が伝っている。
「今の帝国は、ガタガタだ。兄貴がああなって、株価も暴落。」
「そして──シンビはイムの名字から離れ、その女性に稼ぎ頭の航空とセメントを取られる。」
「でも、それでも良いと思ってる。」
「シンビもシンビで、私に愛が無いことを知りながら仮面夫婦に付き合ってくれた。これが私が彼女にできる最大のお礼だ。」
「そして──会社二つあげた位で、愛子のことを未だ愛していると大きな声で言えるなら、それくらいどうってことない」
父として……
大きな判断をした会長として……
彼は泣き喚くテヒョンの肩を叩いてから一人で病室を後にした。
私もテヒョンも、かける言葉が見当たらずその背中を見送るのみ──。
だけど、気のせいだろうか?
前みたよりも生き生きとした後ろ姿になっていた。