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シャネルを着た悪魔
第16章 ☆CHANEL NO16☆

「この78枚の資料には、こういった『今後、帝国が過去最高の”黒”を叩きだすための案』が死ぬほど書かれてある」

話し過ぎて疲れたんだろう。

レコーディング帰りに、よくしていた様なお茶の飲み方をした。勿論、一気。



「──テヒョン、お前は凄いよ。っはは、笑いが止まらない」


テレビでは見せない本心の笑顔をイさんに浮かべると、イさんも会長のその表情を見て笑い出した。

「何だよ、可笑しいってか?」


「いや。逆だ。……お前は凄い」



「正直見くびっていたよ。僕が言う事をそのまましていくだけの『跡取り』になるんじゃないかって。」

「実際は、真逆だ」


「お前は自分の知識と培ってきた人脈を最大限につかって、素晴らしい案を提供してくれた」



ワイシャツの一番上のボタンを外しながらそう言うボス。


「俺は、お前の親父──そう、アボジなのにお前の本当の姿を知らずに居たんだな」

「そうやって色々と考えている事も、決めた事には腹くくって全力で向かって行く事も……。全部知ってる様で知らなかった」



「お前を──」


「もっと信用してあげれたら、その信用を表に出せていたら」



「きっと、こんな形でお前に帝国を継がす必要はなかったかもしれない」

「いや………アボジ」


「俺は自分の意思で帝国を継ぐ事を決めた」

「強制じゃない」



「──俺が継ぎたかったんだ。」

「アボジとオンマが愛した、この帝国グループを守りたかった。ただそれだけだ」



一応『目上の人』、『年上の人』にあたる二人を前にして静かにタバコを付けた彼。

ジッポからオイル独特の香りが部屋に漂う。



それを──注意する人物はいなかった。

何故なら、会長は泣いていたから……。これでもか、という位に。


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