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シャネルを着た悪魔
第17章 ☆CHANEL NO17☆
「……おめえ、このお香の香りって」
「急に出て行ってゴメン」
「ねえ、今は何もしゃべらないで」
『私に話させて』
「……。」
「人生なんて何が起こるか分からないって言ったのは私でしょ」
「ああ。」
「でも、それって悪い方に転ぶか、良い方に転ぶかすらも分からないって意味と同じなのよね」
「──会長と話しをしてたの」
「────。」
「彼、言ってた。シンビと結婚させられた事は予想もしてなかった、って」
「でも今こうやって彼女と離婚が成立して愛し続けた愛子と共に生きていける事はもっと予想もしてなかった、と。」
「だからね──私もどうなるか何て予想出来ないけど」
「貴方を信じる事にした」
「テヒョンと私の──有るかどうかも分からない・目にも見えない『運命』ってやつを、信じる事にした」
涙で彼の肩がグレーから黒に変わっていく。
高い服なんだろうな、申し訳ないなあ。と思いながらも涙は止まらなかった。
世の中の女性はきっと私にこう言うだろう。
『あのソン・テヒョンと一緒に居れるなんてすごい幸せじゃない』
『帝国グループの跡取りの彼女?それって最高!』
と口を揃えて──。
でも、実際は違う。
いや……そこだけ切り取ると凄く幸せで、私が『昔は』希望していた玉の輿生活そのものだろう。
恋人同士なんか笑い合っていれば幸せそうに見える。
女同士なんか、好きな物を買って貰って笑顔で悠長な暮らしをしてたら、何も悩みなんて無い様に思われる。
だけど──私はこうやって、韓国に来てから何度も泣いている。
泣いて……怒って……
苦しんで──そして這い上がった。
そして、自分の隣に居るのは共に戦おうとしている『戦友』で有り、私をいつも守ってくれる『大事な彼氏』だ。
そんな私が──これから起こるどんな事に対しても尻尾を丸めて逃げる訳がない。
それこそが本当の『どん底を知っている女の強さ』なんだと思う。