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シャネルを着た悪魔
第18章 ☆CHANEL NO18☆
妹の最後の言葉を聞くなり、部屋にはすすり泣く音が響く。
テヒョンと……会長のものだ。
「でもね、彼女はテヒョンオッパにそんな姿見せたくなくて、一生懸命に痛いのを我慢して元気な姿を見せる様に心がけてたらしい。」
「買い物に出かけてるってウソ付きながら病院に通って点滴打ったり抗がん剤を打ったりしてた。」
「……オンマっ」
「お母さんが『そんな事せずに、入院してしっかりと治療したら完治する可能性もあるんじゃない?』と書いたら──彼女は──」
「『テヒョンに心配させて、テミンにも迷惑をかける位なら完治なんてしなくても良い。』」
「『私は何時までも元気な女性として彼達の心の中で生き続けたい』と返事をしたんだって」
健気な思い、だと思う。
私も子供を産んで思う様になった事がある。それは『死ぬときは我が子に迷惑をかけたくない』ってコト。
認知症とか寝たきりとか、世の中そういったネガティブな病気になるご老人が増えているみたいだけど──私はそういう風になりたくない。
だから愛子さんの気持ちは痛いほどわかった。
そうやって迷惑をかけるくらいなら……寿命が縮まったとしても、自分がしんどい思いをしたとしても、元気なイメージのまま、誰にも迷惑を掛けないまま、あの世に行きたいと思ったんだろう。
「ねえ、お姉」
「ん?」
まさかの出来事だ。
本当に……まさかの、まさかだ。
愛した男のオンマが──私のオンマと知り合いだったなんて……亡くなる四日前に、渡韓して筆談で会話をしていたなんて……。
出会ってもう五年以上になるけど、全く知らなかったし、そんな事考えもしなかった。
ああ、これが──。
『予想もしない事が起きるのが人生』ってやつなのかもしれない。
私達に運命が有るのなら、もう……その『運命』は決められてたんだ。
愛子さんと私のオンマが幼馴染だった時点で──。