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シャネルを着た悪魔
第1章 ☆CHANEL NO1☆

「ええ、タクシーで来たの?」

「うん。道、分かんなかったし」


「ありえない!会社もカンナムのど真ん中に有るんでしょ?此処もカンナムなのに。」

「本当だよね、私達なんて昨日から地下鉄とバスしか使ってないよ」


愛ぴょん・夢ちん、と呼んでいた大学時代が懐かしい。


昔から、あんまりタイプではない子達だった。

私のタイプと言えば──年に数回しか会わないけど会えば昨日の続きの様に話せる親友二人だ。

おっさん系女子と言うのか、サバサバ系女子というのか。


どっちが相応しいのか分からないけど、何にしても愛ぴょんや夢ちんとは又違ったタイプの子達。

目の前でキャッキャしている彼女たちを微笑みながら見つめた。


「ここでしょ?」

「そう、ここ!」


「ASAOって言うの?日本人オーナー?」

「ううん。国籍は韓国らしいよ。何か日本に留学経験があるんだって」

「へえ」


入口には、メニュー表が置いてあった。

どうやら日本酒とワインをメインに取り扱っているバーみたいなお店らしい。


富裕層が住む町……と言われているカンナムに相応しく、作りも洒落ている。


「どうしよ?」

「だから言ったでしょ。何があっても平常心!」


私を置いてけぼりにして、何やら話し込んでいる。

「何が?私も仲間に入れてよ」

「だってリサ絶対わかんないでしょ?」

「聞いてみないと、それすらもわかんない」


「──ここね、韓国の芸能界の人達がよく来るって噂されてる今、流行りのお店なの。だから会ったらどうしよ~って」

「ああ、なるほどね」

共感は出来ないけど、理解は出来た。


「何か……緊張しちゃう!だってマスターも芸能界に顔広いんでしょ?きっと第一印象は死ぬほど大事だと思うから」

「うるさい!行くよ!」


愛ぴょんの弾丸トークが始める前に、私は扉を開いた。

ほんのりとレモンの様な爽やかな香りが耳に広がる。


バイトと思われる女性スタッフに、指を三本立てて合図をしてから、スーツの胸ポケットに手を合わせた。

「リサ?どうしたの?」

「ごめん、電話きたみたい。タバコついでに話してから入るわ」


「ああ、分かった。」


しつこく震えているのは私のスマートフォンで間違いなかった。

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