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シャネルを着た悪魔
第1章 ☆CHANEL NO1☆
ディスプレイには登録されていない番号。
国際電話なのに、何度もコールを鳴らしてるところを見ると知り合いなのだろう。
丁度お店の前にも灰皿があったし、食前の一服だなあ。なんて軽いことを考えながら指先でタップして耳に携帯を当てる。
「あー?もしもし?」
ガヤガヤしている所に居る人からの電話。
第一声ではそこまでしか分からなかった。
「こちら柳沢リサの携帯ですが。──あの、何方様でしょうか?」
「何方って……俺だよ」
「……俺って誰やねん」
黒皮のシンプルなバッグから煙草を取り出して、ジッポで火をつけた。
くゆりと韓国の空に浮かぶ紫煙は私の大好きなフィリップモリスの煙草の独特な臭いを醸し出している。
「さあ?当てれるかな?」
「新種のオレオレ詐欺ですか?申し訳ないですけど、まだ一回も嫁に行っておりません。相手間違えましたね」
四人組の男性が店の前にいる私を避けて通ろうとしている。
確かに、こんな入口前で堂々とタバコ吸ってたら邪魔だよなぁ。と心底申し訳なく思った私は軽く頭を下げた。
「今、どこに居る?」
「はあ……貴方──カワスミ・リョウね。」
「正解!」
韓国に居るからだろうか?
日本では絶対に彼の名前なんて口に出さないのに思わず出てしまった。
彼の名前を出した時に、こちらを向いた四人組の内の一人がビックリした顔をしていたのを見て、やっちまったなぁ!と一昔前のギャグを思い出す。
「何?」
「何してるのかなって」
「国際電話って知ってて掛けてきたんやろ?仕事やっちゅーねん、こっちは。」
「相変わらずだな、リサも」
「貴方も相変わらずね。」
「イヤでも必ず一日一回は見かけるもん。」
煙草に火をつける音がする。
「煙草……まだマルボロなの?」
「ああ、もう二年になるな」
「ふーん」
仕事は忙しい方が良い!なんて格好つけて言ってたのはコイツのことを思い出したくなかったから。
着信拒否もしてアドレスも変えて出来る限りのことをした。
それなのに、番号変えてから電話をしてくるなんて。
とんだストーカーだ。
顔が不細工だったらここまでの執着心持って行動してたら前科の一回や二回は付いていたかもしれない。