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シャネルを着た悪魔
第1章 ☆CHANEL NO1☆
「お前と別れて二年になるんだな。」
「そうやね」
切れば良いのに——切って、また着信拒否すれば良い。
わかってるけど切れなかった。
「お前が俺に言ったんだぜ。」
「煙草をコロコロ変えるヤツは浮気性だって。だから──お前との最後のデートの日に変えた以来、煙草変えてない」
「あー……あの日な」
家の近くのコンビニで、マルボロを買っていたのを見た私が笑いながら呟いた。
"デートの度に煙草違うなあ"
"もう、ブラックデビルは辞めた。今日から絶対にマルボロ!"
"煙草をコロコロ変えるひとは浮気性やねんで。さて、マルボロがいつまで続くんかな"
「もう今ならあの時の話も笑い話だろ?だから、今度二人で飯でもどう?」
「行かないよ。何のために着信拒否して、アドレス変えて、全部したと思ってるん?」
「でも──何度も言ったけどあれは誤解だって」
「誤解でも何でもええけど。とりあえず今はリョウとやり直す気とか更々ない。」
「──はあ。お前が関西弁出してモノいう時はイライラしてる時だよな。」
「………。」
何も言い返せなかった。よく私の事を理解している。
「ま、また掛けなおすわ。後日にでも。」
「うん。今から仕事?」
バカ……何で会話を続けようとしてるんだろう。
「───。」
少しだけ彼が笑う。
きっと私と同じことを考えたに違いない。
最長記録は三ヶ月!と豪語してた彼と一年半年ダテに付き合ってた訳ではないのだ。
私が彼の性格を知る様に彼も私の性格をよく知っている。
「ああ。ってかもう今は局に居る。たばこ吸い終わったらまた戻ろうと思ってたから」
「そうなんや……」
「久しぶりに声聞けて良かった。」
「正直、着信拒否された瞬間、俺もう役者辞めようかなと思ったくらい演技に力入らなかった」
「へえ。」
「ま、でも今日は一段と頑張れそうだよ。ありがとうな。……声、聴かせてくれて。」
「来月の月曜日九時から、俺の新しい主演ドラマはじまるから時間が有るなら見て!で、また感想を"電話"で教えて」
月9の主演か。そんなに大きい事務所でも無いのに凄いな。
素直に尊敬してから、分かったという心のこもっていない返事をして電話をきった。
たばこなんて、もう吸える長さじゃない。