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シャネルを着た悪魔
第2章 ☆CHANEL NO2☆
二年前、今日で別れようと決めた日。
──私とリョウは行き付けの居酒屋さんに居た。
まだ鮮明に覚えている、あの日の事を。
……白い風が吹く季節、私は彼から貰った彼の家の香りがついている紺色のシンプルなマフラーをつけていた。
「実はさ、里沙。この前言った週刊紙の事なんだけど、今日発売なんだよね、見た?」
「見てないよ。見ても一緒やし。その事やけど」
「うん?」
「前もって報告してくれてありがとうね。でもさ、よくよく考えてみたんよ。」
「──やっぱり私って芸能人と付き合う器じゃないと思って」
その言葉を発した時、彼は静かに──笑顔なんて浮かべずに……飲んでいたビールを机の上に置いてマルボロに手をかけた。
「で?」
「今日で最後のデートにしよう。」
「はあ。あれは、嘘だって言ったよな?」
「向こうの事務所の社長がわざと仕掛けた事だって。だからこそ、相手の女は無名だっただろ?」
「うん、ちゃんとそれは分かってるし信じたいと思ってる。だけど今後リョウと付き合っていったら、こういう事だけじゃないやんか。もっともっと信じられへん事も沢山あると思うし。」
「確かにそうだな」
「それに付き合っていけるのが、芸能人の彼女として成り立つ器を持つ人。」
「だけど私にはそれは無理やわ。強がってるけど、実際は結構傷付いてるもん。──私は弱いし自分を守りたいから……今後、こういう思いをしたくない。」
ここまで言ったら彼は、もう言い返せないのだろう。
分かった、とたった一言だけ呟いてから、冷たい笑顔を浮かべて、最後は楽しもう!と私がお気に入りのメニューを沢山頼んでくれた。
あれが───最後のデート。
結局、私が逃げたんだと思う。
逃げ続けた結果、アドレスも番号も変えたのに、リョウの思いが神に届いたのか……あの日の神様の悪戯でリョウとの繋がりが出来たんだ。
私は芸能人と付き合う器なんて、まだ無い。
少しばかりは大人になった、それでも…まだ……そんな器なんてない。