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シャネルを着た悪魔
第3章 ☆CHANEL NO3☆

「この指輪見て」

私の手を強引に掴んだテヒョンは支店長にリョウからの贈り物であるスターサファイアを見せる様にしてショーケースの上に私の腕を置く。


「お綺麗ですね。しかも”ウチ”の特注だ。──宝石は、スターサファイア、ですか?」

「そう。このスターサファイアに合うバッグ、ヒール、ネックレス、ワンピース持ってきてくれる?」


テヒョンが悪気もなく紡いだ言葉に驚き過ぎて思わず咳が出た私は何てピュアなんだろう。

「ちょ…ちょっと?!増えてない?!」

「久しぶりにカルティエに来たけど、今シーズンは綺麗なものが多い。どうせなら一式揃えたら、どこに出向く機会があっても対応出来るだろう。」


ジュリア・ロバーツだったかキーラ・ナイトレイだったか……誰だったかは覚えてないけど売春婦がセレブと契約をして、服装も変えられ、そして又一流のマナーも仕込まれるという映画を思い出した。

ああ、そうだ。プリティウーマンだっけ?曖昧だけど、何故かその主人公と自分を重ね合わせてしまう。


「私、売春婦じゃないのに…」

「何だ?ここで慰安婦問題について話し合おうって言うのか?」


「違うわよ、なんでカルティエで政治的な話をしないといけないのよ!…とある映画の主人公と自分を重ねてみただけ」



「何の映画?」


「内緒よ。」




『……プリティウーマンだね。』

日本語で呟かれると、なぜか調子が狂って素直になってしまう。

思わず頷いた自分に腹が立ち唇を噛むと、彼は私の頬に手を当てて小さく、誰にも聞こえない声で──こう言った。


「綺麗な顔が勿体ない」と。


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