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シャネルを着た悪魔
第3章 ☆CHANEL NO3☆
「ん~これはダメ。ヒールが太すぎる。彼女、足が特別細いワケじゃないから、この太さを履くと似合わない。だから却下」
「このバッグはスターサファイアに負けすぎる。ゴールドなだけで品が無い。値段は気にしないから本革のもっと高級感のあるものにして。」
「──ワンピースはこれで良い。」
鏡に映った私は、後ろを向いてまるでスタイリストの様なテヒョンにワンピースと背中をくっつけられてサイズを図られていた。
ちょうど膝上3cmほどの品がある長さのものだ。
「……ネックレスはもっと石の小さいヤツにして。リングの宝石が大きいからこれだとスターサファイアと喧嘩してお互いが映えないからダメ」
持ってこられた沢山の品物を触れる事なく数秒見つめてから的確な指示を出す彼はやはり芸能人、といった具合だ。
私も結構、開発部のスタイリストやデザイナーと話しをするけど──正直、みんなここまでじゃない。
本場の『vogue』の編集部なんかでは、こんな会話毎日の様に行われてるんだろうけど。ウチはどこまでいっても、そこまでは行けないメーカーなのだ。
コイツは……そう、目の前のテヒョンという男は、ハイブランドの製品に囲まれるのにも慣れているし、それに対して何がダメだからどこを変えろ、という指示を出し直すのも手慣れている。
店員さんが付けている白い手袋を"貸して"といい半強引に奪い取ると、ピンクの皮のバッグを持ち私の顔と見比べる。
「な……何よ」
「怒らないで。顔がいつもと違うからイメージが取りにくい。フツーにしてみて、フツーに…。」
普通と言われても──この状況でどうやって普通に出来るんだろう。
歴代彼氏と高級時計やバッグを買いに行く時とはまた違う感情がある。これが緊張感と云う物だろうか?
やっぱり私自身、偉そうに啖呵を切っても所詮はただのオフィスレディーなんだ。
こんなに、カルティエのバッグやヒールに囲まれた事もないし、センスの固まりの様な男に見つめられることもない。
「やっぱりピンクは似合わないかも。いっその事真っ白にしてしまおう。すみませーん、バッグはこの形の白色で。」