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シャネルを着た悪魔
第3章 ☆CHANEL NO3☆
「この度はありがとうございましたぁ~!」
という大きな声を背中で聞き流して、私とテヒョンはタクシー乗り場まで急いだ。
彼の手には沢山の紙袋ー…と言いたいが彼が持ってるのは自分の財布だけ。
そう、思い返す事10分前。
どうせならそれを着ていけと、またも断れない雰囲気を醸し出しながら言われたモンだから素直に頷くしかなかった私。
ウエスト部分に真っ赤なベルトが付いているホワイトベースのワンピースを着て、また真っ白の本革のバッグ。チェーンの部分はゴールドメッキでは無く本物の24金だった。
足元は、それとは対照的に真っ赤のカサブランカの花の様な色をしたヒールを履いていた。彼のおかげで足首が細く引き締まって見える。──そして極め付けに小ぶりのダイヤがあしらわれたネックレス。
文章にするとお人形さんのようなブリッコな服装に思えるかもしれないが……彼のセンスには圧巻だ。
白と赤を此処まで大人っぽくコーディネートし、上品だけど質の良い色気を纏わせた女に私を変身させたのだから。
極めつけには、「そんなの要らないだろ」と言われたハリーウィンストンの時計。
どうやら派手派手でブランドが目立つのが気に入らなかったらしい。成金っぽいと云う意味だろうか。元カレには申し訳無いが、今は私の胸ポケットの中に眠っている。
その代わり──彼がわざわざ隣の『ショパール』から持ってこさせた『ハッピー・スポーツ』がキラキラと輝いていた。
ハッピースポーツは今の販売価格で30万から50万ほど。
ハリーウィンストンには値段的には敵わない。でも──何度も言う様にアイツのセンスは流石としか言いようが無かった。
本当に上品で、まるで洋画に出てくるヒロインになった気分だ。
心なしか彼の顔も"喜"の表情を浮かべている様にも思える。
「あ──ありがとうっ…」
「何回言うんだよ」
何度言っても足りない。
彼がスマートにカードで支払いしたせいで、『せめて端数は私が!』とか『税金分は私が!』なんて事は言えなかった。
着替えている内にお会計とは、何とも慣れているんだろうー…。