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シャネルを着た悪魔
第3章 ☆CHANEL NO3☆
「俺の女に相応しい格好だな。それでこそ、スターサファイアが輝く」
「あなたの女じゃないんだけど」
「ああ?何だ?モノには応じねえってか」
「だって、貴方がプレゼントしたいから私に買ってくれたワケでしょ?買ってもらったから女になります。ってサインしたワケでもないんだし」
唇をとがらせて、そう言った私を彼は一度立ち止まりサングラス超しから見つめる。
今日だけで何度見つめられているんだろう。
「な、なに?」
「いや──何かお前の性格分かってきた気がする」
「それはないでしょ。リョウでもまだ全部は掴めてないのに」
「違う。」
「何が?」
「あ。タクシー発見。戻るぞ」
「……うん。まだやってるのかな?飲み会」
「間違いなく。」
何故か大きなため息をつかれてから、背中を押されてタクシーに乗り込む私たち。せめて、このタクシー代くらいは払わせてもらうことにしよう。そう心に誓った。
……一流の世界に生きる男というのは、掴み所がないから難しい。
フツーの女に惚れて何になるって言うんだ?
それはリョウにも言えてる事だけどさー…私なんかに執着して、本当何が生まれるというんだろう。全くもって理解不能だ。
「さっきの続きだけど」
「うん。」
「俺、お前が何で二面性を持ってるのか分かった」
「二面性?」
『すみません、タバコオッケーですか?』
『ああ、ウチは個人だから大丈夫だよー』
勿体ぶる彼は中々続きを言わずに、私に手を伸ばしてきた。
何も言わずにボックスを差し出す。
「お前はな、多分自分で何かを買う時はブランドに拘らずに良いものを買おうとする。」
「だからお前のスーツはいつも、ノーブランドだ。でも質が最高に良い。スーツに合わせてるローファーやパンプスも革製品で高そうだけど多分あれはオーダーメイドのノーブランド品。どこかの職人が作ったような、な。」
「だけど──人の金だった場合はどうだ?」
「さっき、俺がカルティエのイプノーズとショパールのハッピースポーツを見比べて──コレを選んだ時、何故?っていう様な顔をしてただろ」
その通りだった。
何故、30万円の方を選んだんだろう、と思ったのだ。てっきり彼ならイプローズ─そう450万の方を選ぶと思っていたから。