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シャネルを着た悪魔
第3章 ☆CHANEL NO3☆
「お前も俺にイラついたり、リョウにイラついたり、かと思えば図星言われて急に大人しくなったりと大変な女だな」
「女っていうのは、怒ったと思えば笑って、笑ったと思えば泣くのよ。」
「そういうもんなの、仕方ないわ。」
「ふうん。……泊まる場所は?」
「泊まらない。リョウの家に泊まっても良いかなって思ってたけど、何だかバカらしいからタクシーで家まで帰る」
「タクシーでどの位なの?」
「25分くらいかな」
「ワオ、結構遠いんだ。おめえ、ちゃんと自分の金使って帰んのか?」
「──何それ、嫌味?」
"次は俺に怒るのかよ…"
と言いたそうな瞳が私を見つめる。まるで生まれたてのチワワの様に可愛い彼。思わず母性からか、頭を撫でてしまった。
「何だよ」
「いや、母性よ。酔ってるし」
「可愛いと思ったんだろ?」
「顔はね。性格は全然。」
「はぁ…本当に──怒ったと思えば笑うっていう女心を表すプロフェッショナルだな、お前って女は」
「褒められてるの?」
「違う。貶してるんだ」
「貶し愛なのね、あなた」
減らない私の口。ああ、かなり酔っている。
「もう飲むな。酔いすぎ」
「な!ASAOの時はもっと飲んでたもん」
『それでもだよ。もう飲んじゃダメです』
可愛い日本語。
「お前は本当に俺の日本語、弱いんだな」
黙りこんだ私を見て意地悪にそう言う彼。
「もう飲むな。」
「煩いわね。アンタは親かっての」
「自分の好きな女が今にも倒れそうなほど飲んでたら、心配して止めるのが普通の男だろ」
「フツーの男はリョウの事を成金、だなんて遠まわしに言わないわ」
嫌みをチクリと言う私。
彼は信じられないと言いたそうに首を傾げて、そして大きく笑った。
「お前の口も減らないなぁ。相手がテヒョンだって分かってるのか?」
「分かってるから言うの!」
「はは!──マジで抑えろよ。迎えはマネヒョンに頼んだから。一緒に帰ろう」
携帯をさわりながら早口の英語で私を宥めるようにして、そんな事をいうもんだから仕事の出来る営業マンに見えてきた。