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シャネルを着た悪魔
第3章 ☆CHANEL NO3☆

……何やら韓国語で話し込んでいるテヒョンとマネージャー。

運転手は日本人なのだろう、韓国独特のスピード感はなくて代わりに私の心には安心感だけが漂っていた。

車内にかかっているケイティ・ペリーの音楽が、何故だかやけに心地よくて目を閉じる。


「寝るのか?」

「寝てるの。現在進行形よ、話しかけないで」


「……ったく、何でオメエはそんなに可愛げがないんだよ。」

本気で呆れた様子なのが声色で分かった。わたしは目も開けずに無視をする。

するとその数秒後、何かを思いきり投げつけられた。


「…っもう!何よ!」

「見て分かんねえのか?」

足元に落ちているのは、真っ黒のブランケット。ああ、これを投げたんだ。と納得するのには時間がかからなかった。

「道空いてるから15分か20分くらいで着くだってよ。」

「車内、乾燥してるからそれ顔にかけて寝とけ。」


今のナビはスゴい。わたしの住んでいるマンションの住所をいれるだけで、どれだけの時間を到着まで要するかが分かるのだ。

「あ、ありがとう」


今度は彼が無視を決め込む番だった。


シャネルの香水の臭いが、たっぷりと染み付いたブランケットは──スゴく肌触りが良い。

私はバッグを体の前で抱く様にして、ブランケットで自分を包み込んで──もう一度、この何とも言えない空間に身を任せた。


──酔っぱらっている私が、すぐに眠りにつくには最高の環境であることは間違いない。
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