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シャネルを着た悪魔
第3章 ☆CHANEL NO3☆
乱暴に起こされた私は、意識朦朧としながらオートロックの番号を入力して人差し指を翳した。指紋と番号のダブルロックになってる。
「凄い作りだな。俺の所でさえも、番号だけだけど。」
「──そんなんどうでも良いから、あのマネージャー帰らせてよ。背中にスゴい視線を感じる。」
「しょうがない。過保護なんだよ」
「過保護って、私がアンタの事を好き過ぎて殺すとでも思ってんの?」
本日何度目になるか分からない嫌みを横目で見ながら言ってやる。
すると彼は苦笑いを浮かべた。
警備員さんに挨拶をして、そのまま真っ直ぐ歩きエレベーターのボタンを押した。
さすがにガラス扉を二枚挟んでいるので、もうマネージャーからの悪の視線は感じない。
「結構良いマンション住んでるんだ」
「分譲よ」
「はあ?分譲?」
「買って貰ったんよ。」
「誰にだよ」
「二つ前の彼氏、やったかな。」
別れる時に返せとか言われるのが嫌だから、一筆書かせて判子も押させた。
それが幸いしたのか、案の定揉めたけど弁護士を立てたら向こうは勝ち目がないと思ったのかアッサリと引いていったのだ。
「かなり貢がせてたんだな」
「でも中はそんなに広くないし、タワーマンション……の部類でもないと思うし、想像ほど高くないよ」
「おめえ、他は何か持ってんの?」
「貢ぎモノでってこと?」
一階に着いたエレベーターに二人で乗り込んだ。次は、鍵を差し込んで8階のボタンを押す。
「そう。」
「実用性が有るのはスーツとか、車じゃない?」
「金額的にはマンションが一番高かっただろうな。」
「どうなんやろう?貰ったものの値段なんか一々調べないから分からんわ」
「……でも、何でお前に貢ぐんだろうな。顔も特別かわいい訳じゃない、性格も謙虚な訳じゃない、それなのに」
「アンタも人の事言えないやん。どこの馬の骨か分からん内に、カルティエ連れていったんやから。」
「──そうだな。だから分からないんだよ。」
本当に疑問に思っているのだろう。
難しそうな顔をして、首をかしげた瞬間に、八階に到着したという合図である機械音がエレベーター内に響いた。