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if…─もしも、ちーちゃんが女子高校生だったら…
第1章 もしも、ちーちゃんが女子高校生だったら…
思わず見入ってしまうその姿に自分の口から短いため息ような声が漏れるのがわかった。
すると、文字を眺めていた栗色の瞳がピントを切り替え、その綺麗な丸アーモンドの淵のなかにアタシを捉える。
そして真剣だった表情を崩した彼の淡い笑みが向けられて…
「先輩…っ」
人懐こく呼ばれる声に誘われるように、アタシはオレンジ色の窓辺へと赴いた。
「…なに読んでたの?」
「ん?シャルル・ペローの童話集」
"シャルル・ペロー"…
"童話"…
「ほら、『シンデレラ』とか『赤ずきん』…、『眠りの森の美女』とかの…」
「…あぁ♪」
昔からよく知る物語名をあげられ、懐しさにわくわくする胸が踊る。
しかし、
「…原書だけどね」
そう教えてくれた彼の手元を覗けばずらりと並ぶ見慣れぬ文字。それは英語でもなさそうで…
「あ、えーと…」
「これ?フランス語」
「読めるの?」
「うん。だってオレ、ハーフだし」
「へ、そうなの!?」
「うん、母親がフランス人。それで小さい頃はそっちにいたから…」
「………」
へぇ…、そうだったんだ。
だから道理でこんなに綺麗な顔をして…
ビスクドールのように整った彼の面立ちの理由が、これでなんとなくわかったような気がする。