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if…─もしも、ちーちゃんが女子高校生だったら…
第1章 もしも、ちーちゃんが女子高校生だったら…
そこから聞こえる彼の鼓動は少し速くて…
心地良い体温と、洗い立てのコットンのような柔らかな香りに包まれながらアタシは目を閉じる。
後頭部の髪を撫でる大きな手…
存在を確かめるように肩口に埋めた顔を擦り寄せられて、言葉数の多くない彼の、言葉よりも深く吐かれた吐息にその想いの深さを知る。
「雅くん…」
…だから、本当はわかりずらくなんてない。
いつだって彼は、こうして言葉よりもたくさんの気持ちをアタシに伝えてくれているから。
「……好き」
もう風に消えないように、今度こそ伝えたい想いがちゃんと相手に届くように、広い背中に回した手にキュッと力を込めながらアタシはそれを口にする。
するとそれに呼応するかのように、もう一度だけ彼の腕に力が込められて
「……ちぃ」
ゆっくりと顔をあげた雅くんの手がアタシの頬に添えられた。
返事をする代わりに見上げれば、そこには茜色を映した雅くんの真剣な表情があって…。
まっすぐ見つめ返されるその瞳に引き寄せられるように再び目を閉じれば訪れる静寂に、
もう一度静かにアタシの名前を呼んだ吐息が唇を掠めて、そのまま引き合うようにふたつの温もりが重なった。
「………」
それはまるで…
さっきのとはまったく比にならない。
雅くんの優しい優しい温もりが、
何度も何度も甘く唇に舞い降りる。