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第13章 不穏

昼休み。
「なぁ、誠？」
向かい合わせで誠、紘、波留の3人は、日常のバカ話をしながら、昼食を取っていた。
紘の言葉に
「んー？」
と、誠はいつもの通り焼きそばパンをもぐもぐと食べながら、紘の呼びかけに耳を傾ける。
「あの、さ、佐藤唯ちゃんって、好きな人とかいるの知ってる？」
紘はもじもじしながら、誠に聞くのを
ピタッとパンを食べるのを止め、紘が言った一言を咀嚼する。

「へ？」

誠は紘が言った言葉に、この言葉を掛けるのに精一杯だった。
何せ、萌の友人である、と言う以外、唯とは話もした事がなかったし、第一、紘が唯の事が気になっていると言う事をつゆとも知らなかったのだ。

「いや、あの、なんと言いますか、見ているだけだったんだけど、ちょっとお前達に触発されたって言うか…」

と、もじもじしている紘に、波留が驚いたように

「全く気付かなかったんだけど！！」
と言う。

「俺も、全く気付かなかった。」

と言う誠に

「なぁ！萌ちゃんに聞いてくれる？！唯ちゃんに好きな人がいるかどうかって！」

ぶんぶん紘が誠の胸ぐらも掴みそうになるのを、誠は阻止しながら、教室の反対側で夏子と昼食を取っている萌を見た。

（あいつ知ってるのかなぁ。そんな話、聞いたことないんだけど…）

そんな時、

ガラッと教室の扉が開き、

「順位が張り出されたぞー！！」

と、クラス中に声が響き渡る。


今では個人情報の観点から、学校で全く学年の順位発表と言うのは出されないようだが、進学校であるこの学校では、随時貼り出しが行われていた。

前日休みなのは、先生が採点に明け暮れ、学年毎の順位を作成する為。

朝、ゆうに萌と二人で呼び出され、

「二人とも良く頑張ったわね」

とは言われていたが、順位の事については全く触れられなかった。