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連攣鎖(つれづれぐさ)*
第32章 アバンチュール

彼には子供がいません。それは彼が奥さんを大事にしなければならない理由に起因しているのですが、
彼は、そこも踏まえて奥さんを選びました。

本当は子供を欲しかったし、奥さんこそ、それを望んでいて、
だから、彼の幸せのために、彼と結婚しないと言っていると当時から聞いていました。

そんな彼の言葉は重く、そして、彼が一時限りの快楽に流されないことも、それだけ私のことを思ってくれていることもわかりました。

彼が私を抱くようにして向きを変え、駅に戻ります。
足取りも重く、すごく迷っているのもわかります。

私がけしかければ、また向きを変えてしまいそうなほど…

結局、私たちはホームの元の場所に戻ってきました。
そして、またキスを交わします。
お互いにどうしても離れられない状態でした。

「あの時、今がわかっていたら、選択ミスしなかったのに…」

私が夫との結婚に対して思っていることと同じことを彼が言います。

「うん…私も…」

「でもやり直しはできないもんね。」

「そうだね。」

やり直したいなどと後悔するような生き方はしない。それが私達が若かりし頃、豪語していた共通のポリシーの一つでした。

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