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連攣鎖(つれづれぐさ)*
第32章 アバンチュール
「いいおじさんがね。でも、見られても構わない。
だって…貴女が好きだから…」
思っていたことを汲み取られ、それ以上に喜ぶ言葉を返してくれる彼…
もう一度唇が近づいてきたところで…
シュー…
彼の方の電車がホームに入って来ました。
唇が触れ合うことはなく、
「約束したから…」
彼の手が、ゆっくり私の肩に置かれて離されます。
「そんな顔しないで?」
チョンとおでこをつつかれました。
「そうだね。お疲れ様でした。」
笑って彼を見送ると、私の方の電車もホームに入って来ました。
「うん、お疲れ〜、またね。」
それぞれの電車に乗り、2つのガラスを隔てて彼を見ます。
走り出す彼の電車の中で、彼が手を胸辺りに上げ、小さく手を振ります。
私の電車も動きだし、私も手を振りました。
飲んだ翌日、会社メールでお礼メールをするのが慣わしですが、互いの携帯アドレスも知っていましたが、どちらにも連絡はきませんでしたし、私もしませんでした。
次に連絡するときには、それなりの覚悟が必要だから…
きっと彼も同じことを考えていると思います。