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連攣鎖(つれづれぐさ)*
第33章 カラオケボックス

「あそこです。」

そこからでも他のビルの合間から目的地は見えた。



会社の最寄り駅は2路線がある。トップと私は別々の路線であり、目的地は私の利用する駅の向こう側だった。

駅が目に入り、時間が気になったのだろうか、

「やはり、もう帰ろう。」

トップが急に考えを改めた。

えっ…

振り向く私にもう一度、

「すまない、やはり電車があるうちに帰ろう。」

《あとひと月で》退職を迎えるトップ…
仕事も家庭も実直な性格のまま大事にしてきたのでしょう。

《あとひと突きで》快楽を貪る淫欲の世界に浸れる権利を手放したのです。



お目付け役の言葉を思いだし、

「では駅までお見送りします。」

あくまでも部下として申し出た。

「いいよ。酔ってないし、お前の駅の方が近いだろう。」

酔っての過ちでないとトップは言っているのだろうか。

ともかく、言葉通りに受け止めて、挨拶し私たちは別々の方向に歩き出した。


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