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あんなこんなエロ短編集
第30章 シラナイカオ
ということにしておいた。




『どいつの子供だ!』?



言えるわけがない。




直ぐ堕胎し、




受験もしなかった。



両親はしつこく子供の父親を訊いてきたが、



頑なに口を閉ざした。




兄の姿を見ると体が固まる。




兄は楽しそうだった。



そんな表情はかつて一度も見たことがないほどに。



「父さん母さん、就職が決まったよ!」



満面の笑みで報告していた。



両親は未奈の消沈ぶりに無関心を決めこんだ。



ある時「精神的にしんどい」と母に言うと、



「あなたの自業自得じゃないの」と突き放された。



父は目すら合わせてくれなかった。



そんな中で、無職だった兄が就職を決めてきたのだ。




兄に対し諦めていた両親は喜んだ。




しかも就職したのは地元では大手と言われる製紙会社だ。



コネも学歴もない兄がどうやったのかは知らないが、



嬉々としてスーツを着出社していく姿を両親は



微笑みながら見送った。




ーーーーそう、あの日から兄と未奈は入れ替わったのだ。




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