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あんなこんなエロ短編集
第31章 わたしは女優
もちろん演技だ。



実際に切りはしない。



一旦撮影を止め、



血のりを塗りたくり傷を作る。




撮影は順調に進み今日も無事終えた。




「ただいまー。…………あら?」



台所から良い匂いがする。



夜中の3時だ。



「?」首を傾げた。



覗くと、夫が鍋から上がる湯気を見つめている。



「ただいま!どうしたの、眠れないの?」



美華の声に夫はビクッと体を揺らし顔を向ける。



何だか異様な姿に見えたが、



「そうなんだ、眠れなくてね。



気晴らしにポトフを作ってたんだよ」



夫はにっこり笑った。目尻が下がる。



美華は異様な姿に見えたのは気のせいだと確信し、



「ポトフ!………既に懐かしいわね」




交際してた頃に夫はよくポトフを作ってくれた。



『これしか出来ないけど』と言っていたが



温かく穏やかな食べ物を口にしたら普段どれだけ外食



ばかりしていたか気がついた。



今も美華は家事をほとんどしない。



夫は『これしか出来ない』と言ったが料理の腕は



かなりのものだった。



和食も洋食も難なく作る。





















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