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愛はいっぱい溢れてる
第1章 夢風鈴
私は夫の腕の中で泣いていた。
怖くて、辛い本音を吐き出すかのように、ワンワン声を上げて泣いていた。
夫は優しく髪を撫でて、泣いている私を「大丈夫、大丈夫」を繰り返し、なだめてくれた。
「お義父さんには電話で少し事情を話した。
そしたらさ、一人で悩みを抱えるのは想像以上に辛いってさ……心配していたぞ。
凜子のお母さんも癌を宣告された時、なかなかお義父さんに言い出せずにいたらしい。
もっと早く、気づいてやって力になってやりたかったって………
それ言われたら、いても立ってもいられなくて、休暇届出して、新幹線に乗っていた。
みんな凜子が大事なんだ」
私は返事の代わりに頷いた。
夫の言葉が身に染みる。
そしてーー夫婦の優しい時間が流れるーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
「ただいま!ママ!」
玄関から元気な美蘭の声が聞こえた。
縁側までやって来ると、「パパも居た!」と嬉しそうに私達に抱きついてきた。
正直、暑い。
暑苦しい。
けど、優しい家族の輪は、私の心に温かいエネルギーを注いだ。
【リンリーンリーンリーン…………】
風になびく風鈴の音色は、私達にエールを送るかのように鳴り響く。
「金魚の風鈴ちゃん可愛い」
美蘭は背伸びをして風鈴に触れようとした。
【リンリーンリーンリ…………………】
「みーちゃん(美蘭)それはおじいちゃんの宝物なんだ。
おばあちゃんとの想い出の大事な大事な風鈴なんだよ」
父は微笑む。