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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第174章 戦慄の踵落とし
達也とソンヒョク。
さっき初めて会った者同士が数分後には誰もいないバラックみたいな小屋の中のリングに上がり対峙した。

マットもロープもかなり使い込まれ、いつ壊れてもおかしくない程、脆く感じる。

「ちょっと待った、ソンヒョク、まさかそれ履いてスパーリングすんじゃねえだろうな?」

達也はソンヒョクの履いていた編み込み式の安全靴を指した、いくら格闘技経験があっても、あんなもんで蹴られたら致命傷になる。

「…だよな。今脱ぐから待ってくれ」

ソンヒョクは紐を解いた。

「…アンタ、格闘術って感じがしねえなぁ、殺人術って言った方がシックリくるような気がするんだが、気のせいかな?」

格闘技経験者同士が対峙すればその佇まいだけでどれだけの実力があるのか解る時がある。

達也はソンヒョクの得体の知れない雰囲気に警戒した。

(…コイツ、何だってあんな靴で蹴ってるんだ?格闘技の大会に出るっていう雰囲気じゃねえぞ、これは)

窓から微かに太陽の日差しがリングを照らす。
ライトも何も無く、暗い小屋の中で両者は構えた。

お互いガードを固め、ジリジリと間合いを詰める。
ソンヒョクのローキックが達也の足を狙った。
だが、達也は膝を立てるようにガードした。

(…ってぇ、何だこの蹴りは?)

まともに食らったら膝を破壊されるんじゃないか、という程、重い蹴りだ。

ソンヒョクはフットワークを使い、達也を翻弄する。

(ジャブだ!)

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