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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第29章 こんなとこ辞めてやらぁ!

「こっちは自己紹介までしてるんすよ、それなのに名前も教えてくれない、挨拶しても挨拶しない、それがアンタらのやり方なのかっ!」
オレはケンカになってもいいと思い、ソイツに文句をたれた。
するとそのひげ面のオヤジは立ち上がり
「あぁ、テメー新入りのクセに仕事もしねーで生意気な事言ってんじゃねぇぞ、こらぁ!」
とオレに掴みかかろうとした。
オレは何度も言うようにケンカは得意じゃない。だが、このオヤジは人を何だと思ってるんだ、オレにはちゃんとした名前があるんだ、挨拶もまともに出来ない中年オヤジが何ほざいてんだ、とばかりにオレはそのオヤジ目掛けてコンパネを投げつけた。
そのオヤジは避けたが、オレはそいつのヘルメットを掴み、鉄筋で格子状に組み立てられた壁に叩きつけた。
オヤジは一瞬怯み、さらに1発殴ってやろうとした時に、現場監督と職長が間に入って止めようとした。
「お前、なにやってんだ!」
「あぁ、テメーらこそ、新入りだからってバカにしてんのか、なぁおいっ!」
オレは職長にも食ってかかった。
現場監督が「止めろ!これ以上ケンカするとこの現場から出てってもらうぞ!」
と言われ、オレはヘルメットを叩きつけ、
「挨拶すらろくに出来ねえオヤジなんかの言うことなんて聞けるかっ、辞めてやらぁこんなとこ!」
と言って作業着のまま現場を出ていった。
オレはもうこんなとこにいたくない、こっちは右も左もわからん新入りだ。
だけどもう少し接し方というものを考えないのか、ヤツらは。
確かにカッとなったオレも悪い。
だけど、あの連中から仕事を教わろうだなんて気持ちはない。
あまりにも人をバカにしている。
オレは作業着のまま電車に乗り、寮に着き、私服に着替え、荷物をまとめて事務所へ行き、部屋のカギを返した。
「ふざけてんじゃねーぞ、オレは奴隷か、人間以下なのか、なぁ!あんな大人の連中なんかと一緒に仕事が出来るかっ!」
と親方に文句を言って事務所を出た。
独立しようと思って探した仕事だが、たった2日で辞めてしまった。
だが、後悔はしてない。後悔してるというならば、こんな仕事を選んだ事が後悔した。
オレはインターネットカフェで一晩過ごし、PCでまた新たな仕事を探した。

