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性用占精術 秘密のセックス鑑定
第10章 カプリコーンの女 伝統の章
「ごめんください」

 中に入ると、外の様子からは一変して目に極彩色が飛び込んでくる。
派手な赤や黄色、金のラメが混じった青い布が壁樹を彩り、姿見ぐらいある大きな額には歓喜天の抱き合った絵姿が飾られている。――ここは、まさか。

 異国情緒あふれる色彩と香りで頭がぼーっとしてくる。

「いらっしゃい」

 奥の豪華な金糸が刺繍されたカーテンから、すっと音もたてずにスレンダーな白いインド衣装を着た若い女性が出てきた。二十代前半だろうか。

「初めまして」
「どなたかのご紹介ですか?」

「え、っと。紹介と言うかなんとなく来てしまったというか――あの、佐曽利麻耶さんて女性が来たことないですか?」
「んーサソリマヤさんねえ。えーっと柏木麻耶さんなら」
「あっ、そっか。結婚したから姓が変わったんだ」

「なるほど。麻耶さんのご友人ってあなたね。ヒヅキさん?」
「は、はい。こういう者です」
「ふんふん。占術家の緋月星樹さんね。お聞きしてましたよ。きっと来るだろうって。
私は八木寛美と申します」

「ああ。日本の方なんですかあ。いやあ。すみません。今日は本当に偶然こちらを見つけてついつい入ってしまったんです」
「ふふっ。偶然なんてありませんよ。しかもこの店は昨日で終わりにしたんです。これから片付けようかなと思っていたところ」
「えっ、そうなんですか。すぐに出て行きます」
「ああ。待って。つまりここでの最後のクライアントがあなたってこと。神様のお導きだわ」

「は、はあ。あの。僕、特に健康上には気になるところがないですが……」
「そう? 心も?」
「……」
「お時間がないのでしたらしょうがないですが、色々ダメージを受けてらっしゃるようだけど」

「まあそうですね……。八木さんが良ければ診てください」
「じゃ、こちらにおかけになって」

 さっき寛美が出てきたカーテンの奥に通され、セミダブルくらいの簡素なパイプベッドに腰かける。

「まずは脈を診せてくださいね」
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