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性用占精術 秘密のセックス鑑定
第10章 カプリコーンの女 伝統の章
 今まで出会ってきた、素晴らしい女性たちが目に浮かぶ。
若菜の事を想うと胸にまだ痛みを感じる。
しかし僕自身の人生が変わることはなかった。教えられ、成長をしてきたが変化ではない気がする。

 ふと麻耶の事を思い出し寛美に尋ねた。

「あの。柏木さんのご主人はもう大丈夫なんでしょうか」
「ええ。邦弘さんは生真面目で純真なのよ。きっと愛のないセックスがストレスになっていたんでしょうね。男性にしては珍しい人だわ」

 柏木邦弘のストイックさに、自分が恥ずかしくなってきてしまう。無言でうつむいていると寛美は手のひらを差し出し、僕の顎をそっと撫でた。

「あなたはあなた。彼は彼。緋月さんはとても優しいわ。あなたが真のパートナーに巡り合うことを祈っています。もちろん私もね」

「ありがとう」

 嫣然と微笑みながら寛美は背を向け「ほら、見て」とするりとサリーを滑らせ丸い尻を突き出した。

「あっ」

 うっすら血の滲んだ爪跡が刻まれている。

「すみません。傷をつけてしまった……」

「傷じゃないわ。これはあなたの絶頂の証。私の身体に刻まれた官能の装飾品なのよ」

 最後の絶頂で付けたのだろうか。これほど強いマーキングをしたことなどなかった。
両腕をクロスしていたのであろう、爪跡は親指が内側で外側に四本の月の形をした痕が規則正しく弧を描き並んでいる。

「蝶のようでしょう?しばらくこの飾りを見て楽しむことが出来るわ。あなたも両腕を見て」

 僕の上腕にもまるで蓮の花の様にくっきりと手形が付いていた。

「あなたのはすぐに消えてしまうから、心配しないでね」
「そうですか。それも残念ですね」
「さて。ここでもいい仕事ができたわ」
「これからどうされるんですか?」

 首を傾げ、黒目を左右に動かしている寛美はインド舞踊に出てくる巫女のようだ。

「またしばらくインドに行こうかしらね。ご縁があればまたお会いしましょう」
「ええ。是非。レッスンをありがとうございました」

 再会の機会が訪れる時には、今の自分よりももっと深い男でありたいものだと、壁にかかったシヴァ神の絵を見つめながら思った。
甘い残り香と掴まれた腕の熱さだけが余韻を残している。

 気が付くと全身が澄み渡ったような爽快感が訪れた。足取りも軽く、また明日から歩いて行けそうだ。
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